30分ほどが経過して、ようやく鍵が、カチャンと開いた。
恐る恐る中に入る。
中も工事中なのかと心配したが、一応生活はできるレベル。
とにかく疲れてるし、外は嵐なので、とりあえずご飯を食べ、寝たい。
そういう気持ちだった。
バスタブにお湯を張り、ジャグジーでマッサージしながら、くつろげば良いか!
バスルームに入って絶句した。
たたみ2畳ほどのバスルームに、バスタブもジャグジーも設置できるはずがない。
ドライヤーすらない。
サポートに、現状を報告するようになってたので、ありのままを連絡した。
騒音激しい工事のドリルの大音量を、動画で撮影してサポートに送ると、すぐにホストに連絡したらしい。
するとホストからは、こんな連絡があったそうだ。
「工事はすべて完了している。何も問題はない」
もう何を言っても無駄。
海外生活していくうえで、嘘だらけのリスティングには慣れるしかないと思った。
とりあえず1晩寝て考えよう。
とにかく何か腹に入れ、眠りにつきたい。
近所のスーパーは、個人商店1件のみ。
レストランは5㎞先までいかないと無い。
ジョージアとトルコ国境近くの村での生活が始まった。
嵐は収まり、夕日だけが癒してくれた。
朝になり、黒海の潮騒だけが聞こえる静かな村。
バトゥミの中心部にいた数日は車のクラクション、そこら中から聞こえる工事の騒音、埃と排気ガス。物乞いや喧嘩。それらの全てのストレスがない。
あれ、住んでみたら意外と良い所かも。トルコには車で15分。見えてる山は、もうトルコ。
空気も凄くきれい。
工事はしているけど、バトゥミと比べると騒音も少ない。
サポートに連絡した。
「契約内容と大きく違いますが、ホストともめても、生活しづらくなるので、1か月はここに住んでみます。もうホストに連絡しなくても構いません。サポートを終了して下さい。」
日本を出国して約1週間。
事件の連続で、海外に来たワクワク感はゼロ。
新生活をスタートした実感が全くない。
そして、ここで毎日会いたいと思わせる友達ができるとは、思ってもみなかった。